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相続・遺言ブログ

7月 12 2014

遺産相続と生命保険 ③ 生命保険は特別受益か?

遺産相続と生命保険の第3弾。

最後は、遺産相続において生命保険があると、必ずと言っていいほど問題となる、「生命保険は特別受益にあたるか?」です。

 

遺産相続と生命保険①にてご説明した通り、生命保険は受取人固有の権利ですので、相続財産には含まれません。

ただし、民法903条の「特別受益」にあたるとして、持ち戻しの対象となる場合があります。

具体的なケースをもとに考えてみます。

 

登場人物:父、長男、次男。

ケース③

A保険契約者:父(保険会社と契約して、月々の保険金を払っている)

B被保険者 :父(保険の対象となっている=死亡した場合に、保険金がおりる)

C受 取 人:長男

保険金は4000万円

父には、預貯金として6000万円を有していたとします(遺言なし)。

 

父が死去すると、長男は、生命保険金4000万円を受け取ります(長男の固有の権利)。

 

そして、相続財産は6000万円ですから、法定相続分通りに長男が3000万・次男が3000万円を分割して遺産相続は終了、となるように思われます。

 

ただし、仮に、父が生前、長男に4000万円を渡していて、残余の預貯金が6000万円というケースと比べると、不公平とも思われるのです。

このケースですと、

相続財産6000万円

長男の特別受益4000万円を持ち戻し→6000万円+4000万円=1億÷2(法定相続分)=5000万円

 

→相続財産6000万円に対する長男の権利=1000万円

→相続財産6000万円に対する次男の権利=5000万円

 

このように、「父が生前に4000万円を長男に渡した」のか、「父の生命保険により長男が保険金4000万円を受領した」のかで結論が大きく異なることになります。

ただし、次男にとっては余りに不公平ではないか?ということで、生命保険金が特別受益にあたり持ち戻しの対象とならないかが争われてきました。

東京・大阪などの家庭裁判所で様々な判断がなされました。

平成16年に最高裁の決定により、ほぼ決着したと考えられます(平成16年10月29日決定民集58巻7号1979頁)。

「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。上記特段の事情については,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率のほか,同居の有無,被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。」

 

結論としては、原則は生命保険金は特別受益の持ち戻しの対象とならないが、例外として、特段の事情がある場合には、持ち戻しの対象となりうる、というものです。

今後は、特段の事情とは具体的に何か?という点について実務・判例の研究が進むものと思われます。

 

ご不明な点がございましたら、ご相談下さい。

 


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