7月 07 2014
両親の介護と寄与分
最近、このような相談が増えています。
「年老いた両親について、長男である自分と妻が、長い間、同居して面倒を看てきた。しかし、遠方に住んでいる次男は、一切面倒を看なかった。最近、父が死去したところ、次男が相続分は1:1だと言って、譲らない。私は、長い間、両親と同居して面倒を看てきたから、相続分は私の方が多いのではないか?」
本来、父が死去した場合、長男と次男とでは法定相続分は、平等です(相続人が長男と次男のみであれば、法定相続分は1:1)。
しかし、相続人間の公平を図るために、「寄与分」という制度があります。
寄与分とは、亡くなった方の財産の維持・増加に特別の貢献があった相続人に対しては、相続分を増加させることができるという制度です(民法第904条の2)。
「特別の貢献」とは、通常の家族間の相互扶助の域を超えた、特別の寄与行為です。
では、「両親と同居して面倒を看ていた」というのは、「特別の貢献」にあたるでしょうか?
通常であれば、「特別の貢献」にはあたりません。
なぜなら、同居して面倒を看る、というのは家族間の相互扶助の枠内とされるからです(家族であれば、同居して面倒看るのは特別ではない、と評価される)。
「面倒を看た」場合に、特別な貢献と評価されるのは、同居するだけでなく、私財を提供して面倒を看た場合です。
具体的には、医療費や介護費を自ら支出した、というケースです。
ただ、一般的な感覚からすると、「妻と共に長い間、同居して父の面倒を看てきた長男」と「一切面倒を看なかった次男」とでは、父が死去した時の相続分が1:1、というのはおかしいと思われるかもしれません。
ましてや、同居して面倒を看ることの精神的・肉体的な負担は非常に重たいので、相続分において評価されないというのは、なにか割り切れない思いが残ることが多いです。
そのため、冒頭のケースでは、事前に遺言によって、父が、長男に対して、次男よりも優遇する内容の相続にすることが望ましいと言えます。